【SFT】NFTの次なるムーブメント「Semi Fungible Token」とは?ERC-3525規格を用い、金融特化NFTを活用する「Solv Protocol」も事例として解説!
SFTは「Semi Fungible Token」の略で、NFTとFTの中間に位置するトークンです。
おはようございます。
web3リサーチャーの三井です。
今日は「SFT」について解説します。
«目次»
1、SFT とは?
- SFTとは?
- ERC規格
2、ERC-3525とは?
- Solv Protocol とは?
- Vesting Voucher とは?
- ID、Value、Slot(種別)
- 参考記事
SFT とは?
SFTは「Semi Fungible Token」の略で、NFTとFTの中間に位置するトークンです。
bitFlyerが年始に公開したレポートの中で「SFT」に関する記述があり、代表の加納さんのツイートでその存在が広がりました。
というわけで、僕自身もSFTについてリサーチしてみました。
ただ、まだ解説記事も少なくかなりややこしい概念なので、間違っているところもあるかもしれません。そして、技術的な解説よりも概念の理解に重点を置いて解説していきますので、ご了承ください。
■SFTとは?
まずはbitFlyerの資料の中からSFTに関する記述があるページを引用させていただきます。(元資料はこちらから誰でもダウンロードできます。)
ただ、これだけ読んでも「FTとNFTの中間?」と「NFTの次にSFTというものがあるのね」「SFTは金融商品NFTに適してるのね」くらいの理解に留まってしまいます。前提となる知識がないと理解できません。
もう少し噛み砕いて説明します。
■ERC規格
イーサリアムには規格(ERC)が存在します。FT(トークン)はERC-20で、NFTはERC-721です。規格についての詳しい説明はぜひ検索してみてください、ここでは省きます。
SFTはFTとNFTの中間に位置する存在だと言いましたが、その規格は「ERC-1155」と「ERC-3525」です。
これ2個の規格が存在し、しかも2個の特徴が割と違うのに、1つのSFTとして括られていることがややこしさを倍増している気がします。
それぞれの規格に関しての説明が下記で記されていますが、これまた難しいです。
簡単に言えば、
FT(トークン)【ERC-20】
”数値(Value)”の認識だけが可能。自分が持つ1Ethと相手が持つ1Ethの間に違いはなく識別はできない。ただ、相手から1Eth貰えば自分は2Ethに、相手は0Ethとなり、増減の記録は可能。代替可能性を持つ。NFT【ERC-721】
”モノ(ID)”の認識だけが可能。モノというとややこしいかもしれませんが、固有であることが認識可能。世界に一つだけの唯一性を持ったトークンを生成可能。
ですが、例えば個数制限はしたいけど同じ種類のアイテムが複数存在する”ゲーム内アイテム”や”チケット”のNFTを作る際に現状のNFTのERC-721では少し困ります。
NFTは全てを固有のもの(ID)で認識するので、固有のNFTを個数分作成する必要があります。この場合、同じデータを持った別のNFTとなるので全ての作成にガス代がかかってしまうのと、コントラクトの変更等のデータ変更を一つ一つする必要があります。SFTを活用すれば、それらの問題を解決できます。
これが主にSFTの中でも【ERC-1155】の説明で、ゲーム内アイテムなどの個数制限があるが同一データのNFTが複数存在する場合に活用されます。
ERC-1155は「モノ(ID)」と「数値(Value)」の両方を持ったNFTを作成することが可能となります。ERC-1155は既にご存知の方もいるかもしれません。OpenSea等で見かけることも多く、少し前から活用されていた規格でした。
さて、実はSFTのややこしさはここからなんです。
2022年9月6日に承認された、比較的新しいERC規格である「ERC-3525」の理解が難しいです。先ほどの資料を再度引用しますが、ERC-3525だけ2層構造になっており、見るからに難しそうですね。
いきなり全ての理解は難しいと思うので、その概要だけ理解できるように解説していきます!
ERC-3525とは?
まずはこれまでの情報を再度整理します。
SFTはFTとNFTの中間。それぞれの課題を解決する良いところ取りで生まれた。
SFTは固有性(ID)のNFTの特徴を持ちながらもFTの数値(Value)計算ができる特徴も兼ね備えている。
SFTは個数制限がありながら同一データの複数NFTの活用で使われる。
主にゲーム領域で使われる「ERC-1155」と主に金融領域で使われる「ERC-3525」が存在する。
こちら英語ですが、それぞれの規格を整理した表になります。
まず「ERC-3525」の情報だけ整理します。
2022年9月に採択された新しい規格。
主に金融商品のNFT化に利用される。
ID、Valueに加えて、Slot(種別)という概念が加わる。
ただ、これだけ聞いても理解できないと思うので、具体例を活用しながら解説します。ERC-3525を提案し、規格として開発したチームでもあり、ERC-3525を活用した金融系NFTのプラットフォームでもある「Solv Protocol」を紹介します。
■Solv Protocol とは?
Solv Protocol(ソルブ プロトコル)は、金融系NFTの作成&売買ができるプラットフォームです。
現在「Vesting Voucher」「Convertible Voucher」「Bond Voucher」と3種類のプロダクト(金融商品NFT)を展開していますが、ここでは最初に発表された「Vesting Voucher」のみを事例として紹介し、その全貌を解説します。
■Vesting Voucher とは?
Vesting Voucherは「受給権証明」と訳すことができ、その名の通り「未来にお金(トークン)を受け取ることができる権利」です。
これは主に”独自トークンの発行時”に活用されます。
現在、独自トークンのほとんどは投資家やユーザーに対しても一定期間のロックがついた状態で販売されます。これはトークン上場後にいきなり売却されて価格崩壊を起こさないようにです。また、アロケーションという形で、数年間や数ヶ月でトークンを配布していく契約にします。
例えば、10トークンを毎月配布し、3年間で合計360トークンを配布。受け取ったトークンは半年間は売却や譲渡ができない。みたいな感じです。
この条件を組み込んだ権利を「Vesting Voucher(受給権証明)」としてNFTで販売することが可能となります。
条件をNFTで販売できることで、今まで投資家やユーザー毎に契約(コントラクト)を結んでいましたが、それが全てなくなります。また、個別に契約を結んでいたため、機関投資家しか参入できなかった上場前に行われる大規模なトークンセールに誰でも参加できるようになります。
加えて、Vesting Voucher(受給権証明)はNFTとして売買できるため、購入後の転売や途中までトークンを受け取った後の転売も可能となり、金融商品NFTとしての可能性が大きく広がります。
例えば、上で示した「10トークンを毎月配布し、3年間で合計360トークンを配布 & 受け取ったトークンは半年間は売却や譲渡ができない」条件のVesting Voucher(受給権証明)をNFTとして販売したとします。これを1年間で120トークン貰った後に、残り2年間で240トークン貰えるVesting Voucher(受給権証明)をNFTとして転売に出すことが可能になります。
転売可能になることで金融商品に流動性が生まれるので、購入ハードルがグッと下がり、商品が購入されやすくなります。
ちなみに、このVesting Voucher(受給権証明)と活用して資金を集めることを「IVO(Initial Voucher Offering)」と呼んでおり、Solv Protocol ではIVOの設計も、販売後のNFTの売買も可能となっています。
その他に展開している「Convertible Voucher」も「Bond Voucher」どちらも概念は近く、金融商品(債券など)をNFTとして販売できるサービスです。
■ID、Value、Slot(種別)
ここまで、ERC-3525は金融商品のNFT化に活用されること、金融商品のNFTの具体例を解説してきましたが、最後にERC-3525の仕組みについても簡単に解説します。
ここまでに活用した2つの表を再度引用します。
以上から、ERC-3525は2つの特徴を持ちます。
固有のIDを持ち、そのIDの中にValueを内包する性質を持つ。
ID、Valueの他に、Slotという性質を持つ。
ERC-3525は金融系のNFTを作るために提案されたので、再度その事例を活用しながら紹介します。
金融系のNFTは先ほど説明したように「特定の報酬を、指定された条件で貰うことができる権利」です。法定通貨で考えてみても「権利(ID)」と「円での報酬(Value)」が存在します。
例えば、以下3種類の証券が存在するとします。
報酬が円で10年間の証券(100個販売)
報酬が円で5年間の証券(50個販売)
報酬がドルで10年間の証券(1,000個販売)
これをERC-721規格のNFTで販売することも可能ですが、先ほど解説した通り、同一データの複数個販売の場合はERC-1155規格の方が適しています。
ただ、1と2の証券は報酬が”円”で同じなのに、別々のルートで報酬が口座に入ってくるのってちょっとめんどくさいですよね。一括で支払いがされた方がわかりやすい。
(※金融NFTの事例なのに、”円”で表現するのややこしいかもしれませんが、わかりやすく表現してます。EthやBit、USDCと変換して考えていただいて構いません。)
「ERC-3525」の「Slot」の概念はまさにここを解決します。上の例で整理します。
Value:報酬の金額
ID:個別の証券
Slot:円やドルの単位
そして、ERC-3525はIDは別であってもSlotが共通のNFTであれば統合や分割が可能となります。
つまり、僕が1と2の証券NFTを購入したとします。
報酬が円で10年間の証券(100個販売)
報酬が円で5年間の証券(50個販売)
別のNFTなのでIDは異なりますが、円というSlot(種別)は同一なので、このNFTを合体させることが可能となります。
つまり「最初の5年間は1と2の報酬が円で入り、後半の5年間は2の報酬が円で入るNFT」とすることができます。逆に、分割して年毎に区切ったNFT化も可能です。
Slotが存在しないと合体や分割はできず、固有の証券NFTを売買するだけに留まりますが、Slotの登場で桁外れに柔軟な金融NFTの作成や売買が可能となります。
だからこそ、ERC-3525は金融NFTのために構築された概念であり、その代表格のサービスである「Solv Protocol 」が注目されているわけです。
■参考記事
ざっくりと解説しましたが、まだ網羅できていない特徴やわかりづらい箇所があったかと思います。そして、まだ新しい概念なので理解が間違ってたらすみません!こちら参考にしていただければと思います!
以上、今回の記事ではNFTの次に来ると言われる「SFT」について解説しました。特に金融系のNFTを可能とするERC-3525については、金融商品が劇的に変化する可能性を秘めていることが実感でき、これからが楽しみになりました。
証券や株等、金融商品には多くのお金が流れているので、その資金がNFT業界に流れることで業界全体の社会実装も進みます。非常に楽しみです!
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